ダイアローグ(ロバート・マッキー:2017年10月)
【ダイアローグ:あらゆる登場人物があらゆる人物に対して発する、あらゆる言葉。】
映画、小説、演劇、ドラマのシーンを例にとり、創作をしている人なら
『そうだよね』と感じる会話の巧拙について解説してくれている。
洋画の小洒落た掛け合いを想像していただけると良いかと思います。
最初にまとめ
・会話は登場人物の性格描写の機会である。
・テクストとサブテクストを意識する。
・不自然な会話はNG。読者を興醒めさせてしまう。
・含みを持たせた会話を心掛ける。営業報告のような会話は避ける。
性格描写:
性格描写には、その人物の深層心理や倫理観を示す”実像”と、
外見的、表面上、行動の総体を表す”性格描写”があります。
読者に興味を持ってもらうため、まずは性格描写を行わないといけませんが、
その人物をひとりの人間として深みを出すためには”実像”も表す必要があります。
”実像”は、危険だらけの行動を選んだとき、窮地に陥ったとき、
選択と行動を迫られたときに初めて明るみに出ます。
異性とのデートで予想外のトラブルに出くわした時、
どのような対応を取るかでその人がパートナーにふさわしいかを判断する、
というのはよく聞く話ですよね。
テクストとサブテクスト:
テクスト=読者が頭に描いたり、観客が見たり聞いたりするそのもの。
サブテクスト=表層の下に流れる意味や感情のこと。
映画『バイオハザード』で、冒頭に研究員の男性がぶつかって
衣服にコーヒーが掛かるシーンをご存知でしょうか?
ここで男性はとっさに(シャツがおしゃれな柄になった、と皮肉を込めて)
『ありがとう!』と一言呼びかけますが、
これなどは明らかにサブテクストを意識したダイアローグと言えるでしょう。
不自然な会話:
人物それぞれにも語彙力があるはずで、
子供が、明らかに学校で習っていない単語を喋ったり経済理論を知っていたら、
そのシーンには違和感が生まれます(もちろんそういう設定なら問題ナシ)。
仲の良い男子学生2人は、会って早々挨拶なんて交わさないし、
長い時を過ごした夫婦は、愛を囁きあったりしないもの。
物語を進ませるために陥りがちなのが事務連絡のような会話で、
これは人物の生命力を奪っていると言っても過言ではないですね。
含み:
”含みのない台詞”は、サブテクストを殺します。
薄っぺらな言葉は、意識して語らずにいる思考や欲望(言わないこと)も、
無意識の欲望やエネルギー(言えないこと)をも消し去って、
ただ発せられた言葉だけでわざとらしく露骨に場面をスライドさせます。
日常会話とダイアローグの決定的な相違は、内容が詰まっているかどうか。
ダイアローグは意味を凝縮しますが、日常会話は内容を薄める。
良質なダイアローグは現実を模倣しない、と本文でも言及されています。
よく映画では、シリアスな場面や追い込まれた場面で
役者にジョークを飛ばさせたり、機知に富んだ発言をさせますが、
これらは余裕のある人物像を含ませた表現と言えるでしょう。
作品世界にも『氷山理論』というものがあります。
これは、表面の2割によって、隠れている8割も表現するという
ヘミングウェイの説いた文学理論です。
『言わないこと』や『言えないこと』に読者は強く引き込まれる、
これを念頭に置いて、人間関係や育った環境、何を大事にしているかを
台詞から滲み出させること、登場人物の”人間性”を無視しないことで
物語の魅力はさらに引き立てられるでしょう。
おわり