にゅーぽじ 〜中庸的に本を読む〜

主に本の紹介としょぼいイラストをかきなぐるぶろぐ

エモーショナル・デザイン (ドナルド・A・ノーマン:2004年10月)

人の情動を掻き立てるデザインについての本。外観だけでなく、人とモノのインタラクション(=相互作用)を全般に扱われており、コミュニティやライフスタイルとしての機能デザインまで内容は多岐に渡る。なかなか重厚、読み終わるまで少しパワーが必要です。

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最初にまとめ

・パっと見や手触り、音などで『良い!』と思わせるものは本能レベルを充足。

・使いやすさ、豊富な機能、効率性を重視したものは行動レベルを充足。

・知的好奇心、個人的満足感、思い出補正などは内省レベルを充足。

・最良のデザインは、個人個人に合わせて創造されるオーダーメイド品である。

 

 

本能レベル:

官能的な曲線、滑らかな表面、どっしりと手応えのあるもの。五感に訴えかけるもの。

【例】フェラーリの流麗な曲線美

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レスポンス(Response.jp)

 

 

【例】クラフトデザインテクノロジー製はさみ(主のお気に入り笑。)

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Goods_fan_blog(Craft Design Technology Scissors Black)

 

 

行動レベル:

使う時の喜び、使用感。効率的、機能的なものが好まれる。

【例】Gショック(耐衝撃、防水、抗重力、スマホ連携、ソーラー充電、GPS受信…)

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フルメタル耐衝撃構造 - GMW-B5000GD - ORIGIN - 

 

【例】黒電話(電話をかける時のジーコジーコってアレ、好きな人は好きだと思う。)

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フリー素材サイト:photoAC_夏男さん 

 

 

内省レベル:

なんとなく満たされるモノ。個人的満足感。少し考えてニヤニヤしちゃう。

【例】サントリーから発売されていたポーション

 (コレクション欲が満たされるのと小瓶の外観が本能レベルも満たしてくれる。)

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 Wikipedia:ポーション(ファイナルファンタジー)

 

【例】表紙にもなっている謎形状のジューサー

イカがモチーフらしい。これはジューサーなんだよ!とドヤ顔で友人へ説明する楽しみを与えてくれる。)

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Emotional Design: Why we love (or hate) everyday things

 

 【例】どっかの旅行のみやげ

 (あげた人は思い出スイッチに。もらった人は置き場に困る。うーむ。要らぬ。)

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フリー素材サイト:photoAC_dronepc55さん

 

 

最強はオーダーメイド:

結局、数多ある個人の嗜好を満たしてくれるデザインが最強である。

所有者の経験(エクスペリエンス)を反映させたものがデザインできると更に強い。持ち主が使った時のへこみや傷。店で買った大量生産品であったものが、パーソナルなものに変わる瞬間。携帯ゲーム機やノートパソコンにシールをペタペタ貼って”自分色”に染めていくあの感覚。

個人のライフスタイルと調和したデザイン。『自分だけの○○』というフレーズに私たちの心は揺れる。DIYでお好みの家具や間取りを自炊しちゃう人は、デザイナーとしてのセンスも優れているんじゃないかと思います。 

  

おわり

 

人魚の眠る家 (東野圭吾:2018年5月)

上司からお借りしました。

東野圭吾デビュー30周年記念作品とのこと。

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最初にまとめ

・『人魚=水難事故+歩けない』という設定。

・人間の生死の基準を問いかけられる。

親子の愛情が感じられる、泣けるお話です。

臓器移植の国内、海外事情について少しわかります。

 

 

人魚:

薫子という一男一女をもつ社長夫人が主役。離婚寸前だったが、娘・瑞穂のプールでの水難事故(→脳死?状態)をきっかけに家庭関係は繋ぎとどまる。”人魚”という言葉から連想されるように、娘は美しい状態で管理され、まるで生きているかのようだ。意識はなく、車椅子に座ったままの状態だが・・・

 

生死の基準:

本作のキーワードに”脳死”がある。日本の脳死判定は臓器を提供する場合に行われ、2回目のテストが終了した時刻を死亡時刻と定められる。しかし、薫子は脳死判定を受けさせず”娘は生きている”と考え、甲斐甲斐しくも世話を続けるのだった。その様相にはどこか狂気をはらんでいる。『この世には狂ってでも守らなきゃいけないものがある。そして子供のために狂えるのは母親だけなの』

 

親子の愛情:

薫子には娘の瑞穂以外に息子の生人(いくと)がいる。また姪っ子には若葉という女の子もいるが、この子供達の、脳死?状態の瑞穂に対する向き合いかた、その介護を行う薫子への接しかたに、親子・家族としての絆が感じられる。ラストではハンカチが要るかもしれません。

 

臓器移植について:

大人の臓器移植でさえドナー探しが難しいのに、子供の臓器移植となればなおさら提供者を見つけることは容易ではない(子供は意思決定できないし、親も提供したがらない)。アメリカは渡航移植を受け入れてくれる数少ない国のひとつだが、5%ルールというものがあり、移植患者の5%までしか外国患者を受け入れないという縛り。病院側の高額の医療費請求には、足元を見てるんじゃないかといった悪態もつきたくなるが、渡航移植を制限する・アメリカ国内患者に『日本人は大金を払っているから』と納得させる申し開きにもなっているようだ。

 

 

儚いお話ですが、読後は陰鬱ではなく清々しい気持ちに。親子の気持ちはちゃんと通じ合っているよ、というところに救いが感じられます。冒頭に謎の少年が登場するのですが、こちらも伏線としてちゃんと回収してくれました。個人的にこのエピソードは、”人魚の肉を食すと不老長寿になれる”という日本の伝承とも掛けているのかなと思いました。『不老長寿→死なない』に読み替えると・・・おっと。

 

 

おわり

 

思考の整理学 (外山滋比古:1984年4月)

仕入れたネタの醗酵方法について散りばめられたエッセイ。名著です。

なんでも東大生にもっとも読まれた本だとか。

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  最初にまとめ

  • 思考の整理には忘却することが一番。『見つめる鍋は煮えない』
  • これはと思ったことは書き留めておき安心して忘れる。
  • 書いたものは一晩置いてからに見る。朝飯前が良い。
  • 時間を決めてまったく別のことをする。体を動かしてのめぐりをよく。
  • 書いた文章はに出して読む。つっかえるところは問題がある。
  • ゴシップからはネズミ一匹出ない。害あって益なし。

 

 

忘却と安心:

思考の整理には忘却することが一番で、自分がよく眠ることと同時にネタも ” 寝かせる” ことだと著者は言う。 要は自分が気になったことは書き留めておいてさっさと脳を安心させ、忘れようということだ。

『Aというものがある。これこれというものであるが、これはBにも当てはまる』という語り口で、ネタを寝かせる事をビールの醗酵とたとえるなど比喩がユニーク。忘却=ネタを醗酵させること。

 

 

朝飯前:

根を詰めすぎるとロクな事がないのは著者も言及しており、にっちもさっちも行かない時はあきらめてさっさと寝ること。眠っている間に、その日一日に吸収した記憶を脳が整理してくれる。

朝目覚めて頭がすっきりしている時には*1  セレンディピティが起きることが多い。*2三上のうちのひとつ、枕上のひらめきだ。枕元にはスマホなりメモできるものを常備しておいて、朝食の前にまとめるのが良さそうである。

 

 

 血のめぐり:

同じことを何度もし続ける・考え続けると能率は下がっていく。散歩などの気分転換をすることで血のめぐりが良くなりかえって能率を上げてくれる。ぶらぶらするのではなく、早足で歩く方が頭に良い刺激をあたえるそうだ。仕事でも、デスクワークだけでなく掃除や力仕事をバランスよく組み合わせよう。

 

 

音読:

頭でスラスラ読めていても、声に出して読むとどうも読みづらい。それはその文章に問題が潜んでいる証拠である。接続のぎこちなさなのか、意味あいが反発しあっているのかはわからないが、著者が『読みづらい文章には必ず問題が潜んでいる』と仰っているので、そうなのだろう。

 

 

最後の項でコンピューターの台頭とコンピューター化する人間の頭脳についての話があり知識の習得にのみ終始する教育方法について注意喚起をされている。30年前にすでに仕事のAI化への警鐘が鳴らされていたことに驚き。

AIは、仕事を奪う敵ではなく、私達の作業をより効率的にしてくれる味方だ。『誰でもできること』を肩代わりしてくれて『貴方にしかできないこと』を手伝ってくれる味方、そういう気持ちで付き合っていきたい。

あなたはどうだろうか。 

 

 

おわり

 

*1:セレンディピティ18世紀のイギリスの童話『セイロンの三王子』が由来。物をよく失くす王子様が、探し物をすると意外な物ばかり見つけることから、まったく関係ない事柄から意外な共通点や発見を得ること。

*2:三上:中国の欧陽脩という偉い人が残した言葉。イデアがよく浮かぶ場所のことで、馬上(=通勤途中) 枕上(=布団の中) 厠上(=トイレ) 

ブログはじめました

こんにちは。 

 読書が好きすぎるので感想ブログでも作りたいなあと思いこのたびお試しで作成しました。

どこまで続くかわからないけど、地味なことをコツコツ続けるのはわりと好きなほう。

読んだ内容は自作漫画へも活かしたいです。

たくさんアウトプット出来たらいいなあ。

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